「見えないぼくの明るい人生―ありのままを受け入れる生き方のすすめ」

陸上競技フィールドのスタート地点の写真

この本の著者内田勝久氏はある時、テレビ番組で「アイマスク体験だけはやらないでください」と主張しました。

「健常者が、アイマスクをつけて歩くと、見えなくてとてもこわいという印象ばかりが残る。でも盲人は、いつもいつもそんなこわい思いばかりして生きているわけではない。こわいという印象だけが残るようなアイマスク体験なら、やってほしくない。」

「はじめに」より引用

この真意を伝えるために、この本が作られることになりました。

視覚障害の支援に携わる専門職として、本書『見えないぼくの明るい人生―ありのままを受け入れる生き方のすすめ』を、ぜひ多くの一般の方に手に取っていただきたいと思います。

本書が私たちに教えてくれるのは、「見えない=不幸」「障害がある=大変でかわいそう」という、無意識の思い込みがいかに現実からずれているかという事実です。内田さんの語りは終始軽やかで、日常の出来事や旅先での体験、周囲の人々とのやりとりが、ユーモアと洞察に満ちたエピソードとして描かれています。その一つひとつが、視覚障害のある人の生活を“特別なもの”として切り離すのではなく、私たちと地続きのものとして感じさせてくれます。

専門職の立場から特に印象的なのは、いわゆる「正しい支援」への疑問です。教科書どおりの介助が、必ずしも本人にとって最適とは限らない。大切なのは方法そのものではなく、相手の声に耳を傾け、柔軟に関わる姿勢だということを、本書は具体的な場面を通して示しています。これは支援者だけでなく、街で出会う一人ひとりにとっても重要な視点でしょう。

また、恐怖や不便さだけを強調する体験学習では伝わりにくい、「自然体で生きる視覚障害者の姿」がここにはあります。見えないからこそ広がる感覚、楽しみ方、世界との関係性が生き生きと描かれ、読む側の想像力をやさしく更新してくれます。

この本は、視覚障害について“知識を学ぶ”ための本ではありません。むしろ、自分の中にある固定観念に気づき、人と人としてどう向き合うかを考えるきっかけを与えてくれる一冊です。笑いながら読み終えたあと、きっと街の見え方、人との距離感が少し変わっているはずです。閉塞感のある今の社会だからこそ、多くの方におすすめしたい本です。

主婦の友社 2002

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