視覚障害のある両親と子どもたちの人生を描いた作品「ツバメの親子はどこにいる」

一羽のツバメが家の軒下で小枝をくわえている写真。

本書は、両親が視覚障害のある家庭に生まれた二人の兄弟の成長を、昭和・平成・令和の時代を通して描いた家族小説です。

弟の音晴が小学に入学してから結婚しておとなになるまでの一つの家族の話が、弟、兄、父、母、それぞれの視点で時代を変えて描かれます。

全盲の母と、アルビノ(眼皮膚白皮症)による弱視の父。その家庭で育つ兄・明照と弟・音晴は、家庭の外では「親が見えない」というだけで好奇の目や心ない言葉にさらされます。特に、弟が小学校に入学した際、白杖を持つ母親の姿を見られたことで起こるいじめの場面は、視覚障害当事者家族が今も直面しうる問題が描かれ胸が締め付けられます。


また両親が生きた時代ならではの出来事など、障害そのものよりも「周囲の無理解」や「家族だからこそ生まれる残酷な感情」が人を追い詰めてしまうことがある現実を描いています。これは、福祉や支援の現場でもしばしば見過ごされがちな視点です。

一方で、視覚障害のある両親は、勇気と信念をもって家庭を築き、子どもたちを信じ、任せています。見えない母に兄の髪型を説明する微笑ましい場面など、重いテーマの中で読者の心をそっと緩めてくれます。

描かれているのは両親が視覚障害のある家庭の一例ですが、障害とは何か、家族とは何か、そして「共に生きる」とはどういうことなのか、支援に携わる人、子育てに関わる人にとって考える契機を与えてくれる一冊です。

「ツバメの親子はどこにいる」くもんの児童文学 樫崎 茜/作 水谷有里/装画・挿絵  くもん出版  2025

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次