この本は糖尿病の専門医として地域医療に尽くす医師井上朱実氏が、地元の信用金庫の倒産や米騒動、そして阪神・淡路大震災など生活にかかわる事態が起こるたびに病気の治療がおろそかになってしまう患者の姿を愛情深く描写しています。
そして糖尿病を「生活習慣病」の一言で片づけるのではなく、生活環境を把握し、きめ細かな配慮を行うことが診療に欠かせないと力説しています。
後半では、そんな井上氏が歩行訓練士との出会いを通じて視覚障害を理解していく過程が記されています。
糖尿病をもつことで肩身の狭い思いや友人がへったなどという悲しい思いをしないですむよう、日本の社会の仕組みと文化が成熟し、健康な社会をつくれることを願って糖尿病の患者さんへの応援歌としてこの一冊を贈ります。
「まえがき」より引用
シイーム出版(1999)