白杖が持つ三つの機能
白杖の機能は三つに分類されています (LaGrow & Weessies, 1994)。
1.プローブ(探査器)
2.バンパー(緩衝器)
3.シンボル(象徴)
別の記事で「白杖を持たないロービジョンの人の心情」について記しました。
白杖を持たないロービジョンの人の心情に関すると思われる背景や理由を白杖の三つの機能と関連づけると、
「視機能の残存」はプローブとバンパーに関連しています。
他の「盲人と見られることへの抵抗」「社会の認識」「家族の反対」は、
すべてシンボルとしての機能に関連していると言えます。
そしてこのシンボルとして機能を担っているのは「白」という色です。
白以外の色の杖にはこの機能はなく、杖を持つことに対する抵抗感が少ないかもしれません。
また白杖の代わりに傘を使用する例はよくあります。
白杖の社会的認識
白杖は長い間、盲人のシンボルとして多くの人に認識されてきました。
社会には「見える人」と「見えない人」のグループがあり、「白杖で歩いている人は目の見えない人」という明快なメッセージがあります。
しかし、実際には盲人(狭義では「目の見えない人」を意味する)は、
「視機能の障害によって生活に不自由をきたしている人々」(視覚障害のある人)の一部でしかありません。
視覚障害のある人のうち、視機能を完全に喪失した人を盲人と呼び、
それ以外の人々は何らかの視機能を保有しており、その見え方や見えにくさは多彩です。
ロービジョンリハビリテーションサービス
長い間、視覚障害のある人への教育やリハビリテーションは「盲教育」「盲リハビリテーション」として
ロービジョンの人に対するサービスも「盲人へのサービス」に一括りにされてきました。
文字を読むことができるロービジョンの人にも点字での読み書きを強要したり、
あん摩マッサージ指圧師鍼師灸師の国家試験で点字回答だけが認められたりと、
ロービジョンの人のニーズはなおざりにされてきました。
1980年代ごろから、視機能を持つ人々を盲人と一括りに扱うのではなく、
視機能を保有していること、見えないのではなく「見えにくい」状態であるという認識が高まり、
「ロービジョンリハビリテーションサービス」が発展してきました。
これにより、これまで社会の構成員を「目が見えない人」と「見える人」とする二元論的認識を改める必要が生じました。
しかし、「見えない/見える」の区分けに比べて、見えにくさ・見え方は多様で、
時間的な変化も珍しくないロービジョンの人の障害像を理解することは困難であり、
それがロービジョンの人と一般の人との間での誤解につながることがあるのでしょう。
参考文献
LaGrow, S. & Weessies, M. (1994). Orientation & Mobility: Techniques for Independence, the Dunmore Press Ltd. Palmerston North, New Zealand.