トイレへの移動支援

トイレットペーパーの写真

訪問訓練では室内での移動に関する問題を解決するための方法を模索するのが一般的です。

高齢になると特に夜間のトイレ使用が増えるため、安全かつ確実にベッドとトイレ間を移動することが重要な課題となります。

高齢の視覚障害者が直面する室内移動の障壁と、それを解決するための実践的な事例を紹介します。

事例1:転落防止柵の設置

80代の全盲の男性が妻と二人で暮らしていました。

彼の自宅には寝室からトイレまでの経路上に階段があり、この階段前を安全に通過するための方法が必要でした。

寝室とトイレは2階にあり、約10メートル離れていました。

彼は最近、トイレへ向かう途中で階段から落ちそうになり、過去には実際に数段落ちたことがありました。

このことを受けて、関係者は転落を防ぐための柵の設置を決定しました。

しかし、最初に設置された柵は本人の腰の高さしかなく、また固定の強度にも問題がありました。

そのため、後に柵の高さを胸の高さまで上げ、強度を向上させる改善策がとられました。

私が以前勤めていた視覚障害者施設では、利用者が窓とドアの方向を間違えて窓から転落した事故がありました。

窓に転落防止用のバーが設置されていたのですが、バーを超えて転落しました。

事例2:ベッドとドアを結ぶ手すりの設置

80代の全盲の男性は妻と二世帯住宅の2階で暮らしていました。

彼は脳血管障害により失明し、身体の一部に麻痺が生じていました。

ベッドからトイレまでの距離は約8mで部屋を横切ってドアへ行き、そこから廊下沿いにトイレへと進む必要がありました。

彼は方向感覚を失いやすいため部屋の壁に沿って歩くことを試みましたが、家具の配置などが障害となり困難でした。

そこでベッドとドアの間に物干し竿を利用した手すりを設置し、彼が自力で安全に移動できるようにしました。

二つの事例に共通しているのは、妻が主な介助者であること、そして2階に居住していることです。

夜間の排尿は高齢者にとっては一般的な問題で、その度に介助者の助けが必要になると、介助者は自身の排尿と合わせて夜間の安眠が妨げられ、身体への負担も大きくなります。

このような状況は、ご本人にとっても、支える家族にとっても精神的なストレスが大きくなります。

また、元々健康だった時には問題なかった2階での生活も、障害を持つようになってからは大きな負担と感じるようになっていました。

上記の事例では、これらの対策を通じて本人とその家族が安心して生活できる環境が整いました。

このような解決策は個々の状況に応じて調整する必要があり、一人ひとりの独自の事情に合わせた適切な対応が必要です。

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