歩道内のナビゲーション

東京都中央区内の交差点の写真。高い建物、走行する車、通りの名前や主な建物の方向と距離を示す複数の標識を写した写真。

経路探索(ウェイファインディング)

街中での一地点から他の地点への移動は、通常、道路を辿り交差点で方向を選択するプロセスを経ます。

どの道路を選ぶかが主要な課題であり、これは一般的に「経路探索(ウェイファインディング)」と呼ばれます。

晴眼者にとっては、歩道の幅や交差点までの道のりがほぼ見通せるため、交差点での進路選択が目的地への到達において最も重要です。

ターンバイターンの指示(方向転換点とそこでの進路指示)により、目的地に到着することができます。

点字ブロックの設置が求められる理由

しかし、視覚障害者にとって、とくに道路や歩道を数メートル先しか見通せない場合、先述の経路探索に加えて歩道内や次の方向変換点までのナビゲーションが必要です。

点字ブロックが敷設された歩道では、この課題が点字ブロックを辿ることに変わりナビゲーションの負荷が大幅に減少します。

これが整備された歩道でも点字ブロックの設置が求められる理由です。

歩道内のナビゲーションの必要性

歩道幅が約3メートルで、両側(建物側と車道側)の境界が明確な場合、歩道内のナビゲーションの必要性は小さくなります。

しかし、境界が不明確な場合私有地や車道への不意の進入や、自分の位置や進行方向を更新できずに道を失うリスクが生じます。

また、目や杖で両側を確認できないほど広い歩道ではナビゲーションの負荷が増大します。

歩道上には障害物が不規則に存在し、これらを避けつつ進路を維持することも求められます。

歩道上の障害物を避けるには、自身の視機能や杖を使用します。

進路方向の手がかり

歩道の左右の境界線は進路方向を示すものとして活用され、その際に用いる技術が伝い歩き(trailing)です。

また、道路上の車両交通の流れも進路方向の手がかりになります。

これらをを使って認知し、進路を維持します。

既知の場所では、路面の線状の特徴も進路を示す手がかりとして使用されます。

現在位置の更新

現在位置の更新は、目じるし(ランドマーク)経路統合によって行います。

つまり、目的地を目指す際には、交差点の位置の特定とそこでの進路選択だけでなく以下のことが前提として重要です。

・歩道内の移動における進路維持

・歩道から外れないこと

・外れた場合の速やかな復帰

・障害物の回避

交差点部分では歩道が広くなり、新たなナビゲーション課題が生じます。

ナビゲーションアプリを使用するために必要なスキル

近年のナビゲーションアプリは、方向転換点とそこでの進路方向を提供するものの、歩道でのナビゲーションに必要な情報はほとんど提供していません。

そのため、元々独り歩きが可能な視覚障害者にはこれらのアプリが有用ですが、そうでない場合はその有用性が低いと言えます。

つまりアプリを使用するには歩道でのナビゲーションスキルの習得が不可欠です。

まとめ

目的地に行くためには、出発点と目的地の位置オリエンテーション)と、それを結ぶ経路の選択ウェイファインディング)がまず必要です。

次にその経路を辿ることが求められますが、ここでは出発点と目的地を含む「大きな環境」に対し、歩道という「小さな環境」でのナビゲーションが基本となります。

これには歩道の境界線や交通の流れ、周囲の物理的特徴などを意識しながらの移動が含まれます。

全体的に見ると、視覚障害者の歩道内ナビゲーションは、環境の細かな観察継続的な進路方向の維持が求められる複雑な作業です。

そのため、適切な支援技術の習得が自立した移動の実現に不可欠です。

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