
「Sighted guide technique」
第二次世界大戦で負傷し失明したRussell Williams は、
自らの経験をもとにオリエンテーションとモビリティ(OM) 訓練の技術を開発しました。
その一つが「Sightedguide technique」です(または「Human guide technique」)。
戦傷により目以外も負傷した彼は、入院中に多くの診察を受け、スタッフと病棟内を移動する機会が多くありました。
当初、手を引かれたり背中を押さえたりして歩いていた彼は、歩きにくさと自らの姿の情けなさを感じていました。
そこで、ガイドの肘を握りガイドの一歩後ろに立つ「Following technique」を考案しました。
後にこの技術は「Use of the Sighted guide 」と名称が変更されました。
この名称には、視覚障害のある人が主体であり、受動的に手を引かれているのではないというメッセージが込められています。(参考文献1)
Russell Williams の考え
OM訓練に関する最初の成書、Hill, E. & Ponderの「Orientation and mobility techniques, a guide for the practitioner」には、ガイドと移動する際は、
・視覚障害のある人が主導的立場を取り、将来の独り歩きに必要な技術を習得する機会であること
・ガイドの動きや環境からの情報を活用すること
・ガイドの役割を理解し、ガイドを指導できるようになること
が明記されています。
これらには、技術の開発者であるRussell Williams の考えが反映されています。
同行援護サービス
2011年に始まった同行援護サービスは、情報提供や代筆代読と並んで移動支援が主要な内容です。
サービス提供者になるためには、国が定める所定の研修会を修了することが必要です。
それ以前にもガイドヘルプ活動はありましたが、ガイド技術習得は任意でした。
同行援護サービスの開始に伴い、ガイド技術の習得が義務となり、講習会の主要な内容として位置付けられました。
主要テキスト「同行援護従業者養成研修テキスト」では、ガイド技術は前述のHill & Ponderの著作に準拠しています。
ガイドの使い方について、視覚障害のある人のために書かれた指導書を参考にしていることが示されています。
サービスの利用者として受動的な立場に置かれる傾向
同行援護サービスでは、視覚障害のある人はサービスの利用者として受動的な立場に置かれる傾向があります。
研修会テキストの中には、「ガイドヘルプが難しいとされる視覚障害がある人々に対応できるガイドヘルプの基本」を解説するものがあり、視覚障害のある人をガイドの受け手として明確にしています(参考文献4)。
視覚障害のある人の主体性を尊重するサービスの提供姿勢の重要性が多くのテキストに記載されていますが、状況に応じて「言葉による指示」や「手を握って椅子の背に置き、椅子の位置を示す」など、視覚障害のある人を受動的に扱う技術の記述も多く見られます。
Sighted guide techniqueの改変
最近のOM訓練指導書には、高齢者を考慮して、Russell Williams が開発したSighted guide techniqueを改変したものがあります。
ガイドの肘を握る代わりに、腕を組む、さらに手と手の指を組むなど、高齢者に適した技術が紹介されています(参考文献5)。
また、認知機能が低下した視覚障害のある人を考慮したガイド技術を示した動画もあります。
Carroll Center for the Blind (2013).
「Let’s walk together, safe guiding techniques for individuals with intellectual disability.」
Sighted guide techniqueはリハビリテーションの第一歩
Russell Williamsによって失明初期の人の移動手段として開発された「Sighted guide technique」は、中途失明者のOM訓練の第一歩としての側面を持ち、自立を目指す視覚障害のある人の自尊心を傷つけることなく育むために、ガイドを主体的に使い、その結果に責任を持つことを大事にしていました。
現在、多くのガイドサービスの利用者が高齢であることを考慮すると、同行援護サービスは利用者の日常生活や社会参加を支援する役割が濃くなっています。
利用者のガイドサービスに対する考え方は幅広く、「ガイドを使って歩く」自立的な人から「ガイドに手を引かれて歩く」依存的な人まで多岐にわたります。
ここで、初めての外出が同行援護サービスを利用しての場合、Russell Williamsの思いを大事にし、そのリハビリテーションの第一歩としてのサービスのあり方を考慮する必要があります。
参考文献
1. Welsh, R.H.(2005). Inventing orientation and mobility techniques and teaching methods, a conversation with Russell Williams, RE:view, 37(1).
2. Hill, E. & Ponder, P. (1976). Orientation and mobility techniques, a guide for the practitioner, AFB, New York.
3. 同行援護従業者養成研修テキスト編集委員会(2016)同行援護従業者養成研修テキスト、中央法規、東京.
4. 村上琢磨、関田巌(2009)目の不自由な方を誘導するガイドヘルプの基本 第2版、文光堂、東京.
5. Page, A. & Bozeman L. (2016). Modifying orientation and mobility techniques for older adults with visual impairments, O&M for independent living, Strategies for teaching orientation and mobility to older adults edited by Nora Griffin-Shirley & Laura Bozeman, AFB Press, New York.
