経路学習の目的は、通学、通勤、通院、買い物、災害時の避難など多岐に渡ります。
いずれの場合も、経路を暗記するだけでなく、実際に歩くことが求められます。
本訓練は、現在一人で歩行可能な経路を二つ以上持ち、日常的に一人で歩行している人を対象とします。
一人での歩行経路を持っていない人に対しては、経路学習に先立ち、モビリティ技術の評価や指導がしばしば必要となりますが、本稿ではこれについては触れません。
また、ここでは徒歩圏内の目的地への徒歩移動を想定しています。
経路の策定
利用者の意向を尊重しつつ、安全かつ効率的な経路を利用者と共に策定します。
策定過程では、道路情報や支援設備の状況を、地図やナビゲーションアプリの使用、現地調査を通じて収集します。
経路を策定する際の考慮点
経路策定時には、以下のものを考慮します。
- 歩道の有無
- 距離
- 横断回数
- 方向転換の回数
- 障害物の数
- 視覚障害者向け設備(点字ブロックや音響信号機)の存在状況
- 利便性
- 利用者の視機能
- 利用者のモビリティ技能
「外的要因」と「内的要因」
歩きやすさも重要な判断基準です。その際、以下の外的要因と内的要因を検討します。
外的要因
道路と私有地の境界の明瞭さ、歩道の有無、路面の状態、障害物の数、目印の見つけやすさ、歩行者の流量
内的要因
利用者の経路知識、モビリティ技能
策定した経路を歩く
経路が決定したら利用者とともに実際に歩きます。
経路は「道路の区間」「交差点」「道路の横断」という三つの要素から構成されます。
経路の長さや利用者の学習能力に応じ、経路をセグメントに分けて学習すると有効です。
とくに横断を含む場合には、横断に必要なサブタスクと交差点の環境調査が別途必要になります。
利用者は自身の視機能や移動手段を考慮しながら、ランドマークの選定や移動方法の選択を行い、これらを記憶します。
経路記憶を補助するためにメモやICレコーダーの録音、ナビゲーションアプリの使用が有用です。
反復練習
経路確認後、利用者が自信をもって単独で歩けるようになるまで何度も経路を歩きます。
反復することで、経路に関する記憶と実際のナビゲーション行動および安全行動が強化されます。
反復回数は、利用者の学習速度や経路の難易度によって異なります。
練習中は、安全性の観点から利用者のパフォーマンスを評価します。
評価項目には、衝突、つまずき、転倒、誤った道の選択などが含まれます。
交差点では横断のタイミングや方向、軌道の正確さも重視されます。
経路上の危険箇所とリスクの確認
経路上の危険箇所やリスクを把握し、それらを避けるための特別な注意点や回避策を利用者とともに検討します。
危険箇所には、側溝の蓋がない箇所、気づきにくい障害物などが含まれ、
リスクには歩道での自転車との接触、横断時の車両との衝突、経路誤認などがあります。
反復練習の結果を踏まえ、もし利用者と指導者が一人での歩行が困難と判断した場合は、経路の再策定を行います。
それでも難しい場合は、他者から援助を受けるなどの方法を検討します。