視覚障害者の移動を支援する道具や機器は多岐にわたり、これらは主に第一次 (primary) と第二次 (secondary) 歩行補助具に分類されます。
第一次歩行補助具は、それ自体だけで安全な歩行を可能にする補助具であり、一般的には杖(ロングケイン)と盲導犬が該当します。
一方、第二次歩行補助具は、第一次歩行補助具を補完するもので、単独では歩行の安全を保障できません。
歩行補助具の歴史
1870年代から1980年代にかけては、超音波を用いた歩行補助具が開発されました。
これらは前方の障害物や障害物のない空間 (clear path)を検知する能力を持ち、「超音波メガネ (Sonic guide)」 は、その広い視野から環境探知機 (environmental sensor) とも称されました。
超音波メガネ(Sonic guide)
これらはロングケイン技術では検知しきれない障害物を感知するため開発されました。
ロングケイン技術では、杖を握った手より上の空間や、杖を左右に振った時に路面上にできる掃き残し部分にある障害物は検知できません。
これにより、使用者の上半身は常に無防備な状況になり、腰から下の部分も電柱や細いポール類に接触する危険が常にあります。
特に下り段差は杖や盲導犬でのみ検知可能であり、階段やプラットホーム、歩道の縁石などは大きな危険となります。
過去には下り段差を検知するための補助具がいくつか開発されましたが、実用化されたのはレーザーケインのみでした。
レーザーケイン
現在は超音波やカメラを用いて環境を認識する技術がありますが、環境ノイズ、電池の消耗、その他の誤動作などの課題があり、生命を守るために必要な信頼性を確保するのは難しい状況です。
最近開発されているナビゲーションアプリは、オリエンテーションとナビゲーションを容易にするものですが、安全な移動のためには、やはり第一次歩行補助具が不可欠です。
そして、これらの機器と補助具の併用により、両手を塞ぐという問題があります。
これに対応するため、メガネ枠に取り付けたり、首から下げたりするなど、使用方法に工夫が見られます。
杖の軽量化、引っかかりにくい石突の開発、盲導犬の犬種選定など、使用者の使いやすさを高める努力が続けられています。
いずれ杖や犬を持たず、身一つで歩ける日が来ることを期待しています。
まとめ
視覚障害者の安全な移動を支援する歩行補助具は、第一次と第二次に分けられ、杖や盲導犬などの第一次歩行補助具が基本となります。
技術革新により歩行補助具の性能は向上していますが、依然として安全性と使いやすさには課題が残ります。
第二次歩行補助具は第一次歩行補助具との併用が必須で、単体で足元の凹凸を検知することはできません。
最新のナビゲーションアプリは便利ですが、移動の安全性を保つためには、伝統的な杖や盲導犬が欠かせません。