失明者更生施設の建設をめぐって ③ 村人との交流

青空に白い雲、水田と林が広がっている風景写真。

訓練と養豚場の影響

待ちに待った訓練が施設で始まりました。

施設周辺は人家がまばらで主に田んぼや林が広がり、近くには養豚場もありました。

そのため、自然の音が主で非常に静かな環境でした。

しかし養豚場の影響で施設内には蝿が多く、不用意にコーヒーを飲むとカップの中で泳いでいた蝿が口の中に入ることもありました。

訓練活動と匿名の電話

訓練活動は、まず歩行訓練から始めました。

農道を杖を突いて行ったり来たりすると、田畑で働く人々がその様子を遠くから見守っていました。

彼らにとっては、おそらく初めて見る光景だったのでしょう。

約1時間の訓練を終え、施設に戻ると、時々「視覚障害者を外で歩かせるな」という内容の匿名の電話がかかってきました。

訓練を見た人が電話をかけてきたのかどうかはわかりませんでしたが、このような電話が半年ほど続きました。

しかし、訓練活動はこれらの電話に影響されることなく続けられました。

街中での訓練

訓練が進み、街中での訓練が始まると電話はなくなりました。

しかし、街中でも似たような反応に遭遇することがありました。

訓練中に通りすがりの自動車の運転手から、

見えない人を一人で歩かせるな

といった言葉を投げかけられることが時々ありました。

彼らはそのまま去ってしまうため、発言の意図は確かめることはでませんでした。

村人との交流

このような状況の中、最初の訓練生は移動技術を習得し始め、施設周辺を一人で散歩するようになりました。

ある日、村の住民が一人の入所生を車で施設に送り届けてくれました。

その村人は「道に迷っていたので、乗せてきた」と言いました。

これが村人と施設職員との最初の直接的な交流でした。

その後も、散歩中に農家の庭に迷いこんだ入所生を送り届けてくれることがありました。

送り届けられた入所生は、その後お茶に誘われて農家を訪れ、茶飲み話をするようになりました。

このようにして、徐々に村人との接触が増えていきました。

開設当初は地域住民との交流に悲観的でしたが、入所生と村人との一対一の交流が増えるにつれ、個人レベルでの接触の効果を実感しました。

施設に入所していた間に知り合った村人と、施設を退所後も交流を続ける人もいます。

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