多くの視覚障害者が外出時に同行援護サービスを利用しています。
このサービスを提供する資格を得るには、3日間の講習会を受講し、同行援護従事者として認定される必要があります。
講習内容は講義と実技実習に分かれており、特に実技実習ではガイドヘルプ技術(sighted guide technique)の習得が重視されます。
受け身でなくアクティブに歩く
ガイドヘルプ技術は視覚障害者が移動する時の基本技術の一つで、歩行訓練の初期段階で教えられます。
この技術の開発者ラッセル・ウィリアムズ (Russell Williams)は、あるインタビュー記事 (Welsh, 2005) で、開発の背景について語っています。
彼は第二次世界大戦で失明し、治療のために入院した陸軍病院で
「どのように人と歩けばよいのか教えてもらえなかった」
と述べ、自身の経験からこの技術を開発しました。
彼は当初その技術を「人を追随する技術(following technique)」と呼んでいましたが、
後に「ガイドを使う方法(use of sighted guide)」に変更しました。
これらの名称から、ウィリアムズは、視覚障害者には訓練のできるだけ早い段階から自主性と責任を持たせること、
ガイドされる視覚障害者が受け身になるのではなく、アクティブにガイドを指揮して歩くことが重要と考えていたことがわかります。
視覚障害模擬体験がもたらすリスク
ガイドヘルプ技術を学ぶ講習会では、この技術の実習を行う際、参加者に目隠しをさせ、
視覚障害者の立場のロールプレイングを通して体験させるのが一般的です。
実習時間は約10時間で、視覚を遮断された状態での訓練は、突然失明した視覚障害者の状況をシミュレートするものです。
多くの視覚障害者は数ヶ月という短期間で主要な生活技術を取り戻し、新しい状況に適応し、ある程度の自立性を回復することができます。
しかし、この模擬体験は、失明直後の無力な状況を再現することに近く、結果として視覚障害者が回復可能である能力を過小評価するリスクがあります。
そのため、体験者が視覚障害者に対して過保護な介護姿勢をとる傾向があると考えられています(Silverman, et.al., 2014)。
同行援護従事者に求められること
現在、視覚障害者の中で高齢者の割合が増えており、視覚障害に加えて加齢に伴う制約を抱えるケースが増えています。
これに対応するため、同行援護従事者は視覚障害の影響と高齢による制限を見極め、適切なサポートを提供する必要があります。
同行援護従事者は過保護になることなく、視覚障害者の能力とニーズを正確に把握し評価することが大切です。
文献
Welsh, R.(2005). Inventing orientation and mobility techniques and teaching methods, a conversation with Russell Williams, RE:view, Vol.37, No.1.
Silverman, A.M., Gwinn, J.D. & Boven, L.V.(2014). Stumbling in their shoes: Disability simulation reduce judged capabilities of disabled people, Social Psychological and Personality Science, 1-8.