人としての尊厳を重視する言葉使いを
パーソンファーストランゲージ (person first language) の重要性が強調されており、人としての尊厳を重視する言葉使いが求められています。
個人をその特性だけなく全人格として捉えるために「視覚障害を持つ人」や「糖尿病を持つ人」といった表現が推奨されます。
病院や支援施設では人々をその病気や障害だけで定義する言い方は避けるべきです。
たとえ私たちが時に病気や怪我で患者や障害がある状態になることがあっても、それは一時的なものです。
しかし、病気や障害を抱えて生涯を過ごす人たちにとっては、自己の人格が軽視され、すべてが病気や障害を基準に評価されることは大きな苦痛となります。
「私たちのことを私たち抜きで決めないで (Nothing about us without us)」
障害を持つ人々に対する社会の見方は受動的なものから能動的なものへと変化しています。
この変化は、
「専門家主導から当事者主導への移行」
「パターナリズムから当事者主権への転換」
そして「パーソンセンタードアプローチ」への注目に現れています。
特に、「私たちのことを私たち抜きで決めないで (Nothing about us without us)」
という障害を持つ人々の権利を尊重する姿勢が重要視されています。
障害を持つ人自身が自らの権利を主張し、その声を活発に上げる動きも見られます。
Scottが 「Making of blind men(盲人はつくられる)」で指摘した「視覚障害者は障害者関連の施設、制度によって作られる」という状況は、現在改められつつあります。
この著作は視覚障害者が障害者関連の施設や制度によってどのように形成されるかを指摘し、それらの組織的介入システムを改革するという課題を提起しています。
「病気」と「障害」
病気と障害を区分けするのがますます困難になっています。
疾病による失明が発生すると、従来は医学的な治療の必要性がなくなり視覚障害への対応が中心となりました。
しかし、現在では糖尿病のような慢性疾患による失明の場合、病状が継続し医療と福祉サービスの両方が必要とされるケースが増えています。
これは患者であると同時に障害を持つという状況を意味します。
さらにその人の病気や障害は固定されたものではなく制御困難な要因によって常に不安定な状態にあります。
例えば視覚障害の場合、視機能がロービジョンから全盲に至るまで変化する可能性があります。
パーソンファーストランゲージの採用は個々の人をその状態や障害だけでなく総合的な人格として尊重することを促します。
個人を包括的に理解し、その人らしさを尊重することは現代社会の基本的な価値観を反映しています。