皆さんは普段、道を歩く際、どちら側を歩きますか?
右側?それとも左側?
状況によって違うと思いますが、どのような基準でその判断をしているのでしょうか。
歩道が整備されている側、
景色が美しい側、
車と対向して安全を確保する側、
興味のあるお店が並ぶ側、
日当たりや日陰、
電柱の数、
点字ブロックや段差の有無など、
選択の理由は人それぞれです。
また、利き手や利き目、
聴覚の状況、
視野の広さ、
身体の一部に障害がある場合の配慮、
杖を使用する手、
盲導犬が歩きやすい側など
考慮すべき点は多岐にわたります。
これらは道路環境、
個々の身体状況(年齢、体力、障害の有無・種類・程度)、
移動方法(杖、車いす、盲導犬、介助犬、シニアカー)、
そして目的(通勤・通学、買い物、散歩、運動)
といった要素が複雑に絡み合っています。
散歩のパートナーとの”決まり”
約20年前、私はある盲導犬学校から一頭の犬を譲り受けました。
その犬は盲導犬としての適性がなかったとは思えないほど、よく訓練されていましたが、
ユーザーの左側、かつ道の左側を歩くように訓練されていました。
ですので、その犬と散歩する際、私たちは自然と道の左側を歩いていました。
しかし歩く方向によっては、「右側」は「左側」となるため、必ずしも一方の側だけを歩いていたわけではありません。
つまり、常に車は私たちの右を走っていたのです。
数年前にその犬を亡くし、長年の散歩のパートナーを失った私は、「道の左側」という“決まり”から解放されました。
十数年ぶりに歩く道の右側は、まるで初めて歩く道であるかのようでした。
歩行空間をどのように共有するか
道を歩く際にどちら側を選択するかは歩行者の状況や好みによって大きく異なります。
階段で上る人と下る人が鉢合わせし、どちらも手すりを放したくないと感じるとき、
限られた歩行空間をどのように共有するかは一筋縄ではいかない問題です。
結局のところ道を歩く際にどちら側を選択するかは、単なる個人の好みを超えた多様な要因が影響しているのです。
私たち一人ひとりが抱える独自の事情や身体的な条件、さらにはその時々の環境や目的によって選択が左右されるのです。
とくに障害を持つ人々や高齢者など異なるニーズを持つ歩行者がいる中で、社会全体として多様性を認識し、受け入れ、理解を深めることが重要です。
皆が共有する空間である道路を安全かつ快適に利用するためには、この多様性を尊重し思いやりを持って接する必要があります。
そして私たちが選ぶ「歩く側」は、自分自身だけでなく他のすべての人に配慮した選択であるべきだということを心に留めておく必要があります。