同居家族の支えと障害者の現実

同居家族は、障害者にとって大きな意味を持つことがあります。

特に、障害を負って間もない精神的にも辛い時期や、視覚以外の感覚を用いた生活に慣れていない状況では、家族の存在は重要な支えとなる可能性があります。

しかし、家族が同居しているからといって、常に十分な支援が得られるわけではありません。

家族にとっても家族の一員が障害者となることは予期せぬ出来事であり、精神的な準備が整っていない上に、どのように支援すればよいのか戸惑うことがあります。

障害を持つ家族が主な収入源であった場合、家計は直ちに困難な状況に直面することがあります。

本人はもちろん、同居家族も最初は大きな変化と心理的な負担、そして生活上の困難に直面します。

事例1

高齢女性が膝に置いている手の部分を写した写真

Aさんは重度の視覚障害と聴覚障害を持ち、一人暮らしの負担が増大していました。

息子が結婚したことを機に、二世帯住宅を建てて同居を始めました。

Aさんには独立した居住スペースがありましたが、台所、トイレ、風呂は家族と共用していました。

当初は双方にとって負担が少ない生活でしたが、息子夫婦に子どもが生まれたことで、Aさんと嫁の関係が悪化しました。

嫁は育児を優先し、義母への配慮が後回しになりがちでした。

また、Aさんの聴覚障害が進行し、嫁とのコミュニケーションが一層困難になりました。

双方の不信感が増し、中立的な立場を取っていた息子も仕事の忙しさから仲介役を果たせませんでした。

Aさんは居住空間に施錠し、家内での別居生活を始めることになりました。

嫁は育児のストレスと義母との複雑な関係に疲れ、実家へ戻りました。

事例2

Bさんは自営業でした。

70歳で店を閉め、妻と共に自宅での穏やかな生活を送っていましたが、長年の糖尿病が原因で視力をほぼ失い妻の介助が必要になりました。

数ヶ月後、妻が脳梗塞で入院することになりました。

Bさんは一人では自宅生活が困難になり妻が入院している病院に社会的入院として収容されました。

しかし妻の入院が長引くと、Bさんは自宅に戻らざるを得なくなりました。

介護サービスの利用を計画しましたが、妻はホームヘルパーの介入を受け入れず、計画は頓挫しました。

Bさんは近隣の介護老人保健施設のショートステイを利用しましたが、施設生活に馴染めず孤立感を深め、寂しい日々を過ごしました。

これらの事例から、同居家族がいても、事例1では嫁の出産、事例2では妻の病気が原因で、支援を担う家族が役割を果たせなくなったことがわかります。

これらの出来事がAさんとBさんの障害の進行と重なり、双方ともに必要な支援、特に精神的な支えを得られない状況に陥りました。

福祉や介護サービスが普及しているとはいえ、障害者の心の苦しみに対応するサービスは、実際の生活の困難に比べて不足しているのが現状です。

障害者にとって同居家族は大きな支えになり得るものの、家族内の変化や障害の進行によっては十分な支援を受けられないこともあります。

事例1と事例2は、家族が支援体制を整えていても、その持続性には限界があるという複雑な実情を示しています。

結果として、必要な心の支えや適切な介護を受けられない事態が発生しており、社会的な支援サービスのさらなる充実が求められています。

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