鉄道は私たちの生活に欠かせない交通手段であり、通勤や通学、旅行など近距離から遠距離の移動に
安全で便利かつ廉価な手段として利用されています。
しかし、鉄道を利用する場合にはバスやタクシーを利用する場合とは異なる要素が含まれています。
駅のホームでは、高さ1メートル以上ある車両の床に、ほぼ同じ高さのホームから乗車する必要があります。
「島式ホーム」の危険
ホームは電車が片側だけに停車する「相対式」と両側に停車する「島式」に分けられます。
島式ホームは、車両がない時には四方をおよそ1メートルの崖に囲まれた島のような形状をしていて転落や重大な怪我の危険が伴います。
そのため、ホームでは乗降時以外、端に近づかないよう注意が必要です。
電車の到着を告げる放送が乗客たちに「黄色い点字ブロックの内側にお下がりください」と注意を呼びかけ、
視覚障害がある人たちにはホームの端から80-100cmの位置に敷かれた警告ブロックが縁端部であることを教えてくれます。
駅ホームでの「長軸移動」と「短軸移動」
ホーム上で乗客が基本的に行う移動パターンは、ホームに到着後、
「乗車位置まで移動して電車の到着を待つ」
「電車が到着したら車両に向かって移動する」となります。
降車時はこの逆です。
言い換えれば、ホーム上での移動は、「長軸移動(線路に平行な移動)」と「短軸移動(線路に直交する移動)」に分けられます。
ホーム上には階段、エレベーター、ベンチ、売店、自動販売機等の設備や電車を待つ乗客がいます。
利用客の多い駅ではホーム中央部に乗降客が多いため、人との接触を避けてホーム端近くを移動するのが一般的です。
長軸移動では、これらの設備や人を避けつつ、かつホームの端から転落しないように注意が必要です。
視覚障害者のホーム転落を防ぐには
国土交通省の資料によると平成29年度には約3000件のホーム転落事故が発生し、そのうち65件が視覚障害者の事故でした。
視覚障害により「歩く」動作が直接損なわれることはありませんが、見渡せる距離と空間が狭まることで、ホームの端や階段の位置を正確に把握することが困難になります。
ロングケイン技術で杖を使って歩いた場合、杖で端を感知できるのは概ね1m手前で、これは次のステップで足が端を超えてしまう可能性がある距離です。
視覚障害者のホームからの転落を防ぐ最善の方法は「ホームドア」の導入です。
しかし、その導入は多くの場合、大規模なホームの改修や構造強化を必要とし、鉄道事業者にとって経済的な負担が大きくなります。
現実的には、すべての駅にホームドアが設置されるのは、かなり先のこととなるでしょう。
そのため、視覚障害者が危険な場面を見たら、ためらわずに声をかけたり、
近くにいたらすぐに腕を掴んで止めるなど、周囲の人の力でホーム転落の事故を防ぐ必要があります。