迷いの感覚

霧の中にリュックを背負って佇む人の写真

ここはどこ?」 

この普遍的な疑問は、視覚障害の有無にかかわらず、私たち全てが何らかの形で一度は経験しているでしょう。

山で道に迷ったり、未知の土地で方向感覚を失ったり、あるいは昼寝から目覚め、一瞬オリエンテーションを失う感覚

このような経験や感覚は、もしかすると視覚障害を持つ人々にとっては日常的なものかもしれません。

「街の中で迷う」「家の中で迷う」

例えば、誤って歩道に隣接したレストランの駐車場に入ってしまったり、歩道のない道を歩いていた時に、

それまで右から聞こえていた自動車の音が突如として左から聞こえてきたりする経験は、

視覚障害のある人にとって珍しいものではないかもしれません。

屋内でも同様のことが起きます。

全盲の方が昼寝から目覚め、一時的に自分の位置を把握できず、部屋の隅で家族の帰りを静かに待ったというエピソードがあります

彼はその体験を「大きな段ボール箱の中に閉じ込められたような感じ」と形容し、出口を探したけれども見つけられず、非常に不安を感じたと述べました。

失明して間もない頃は、自宅の中のトイレとベッドの往復でさえ迷うことがあります。

しかし排泄は待ってくれないので、迅速な対策が必要です。

特に高齢の夫婦では、介助する側が夜中に何度も起きる必要があり、十分な睡眠がとれず、健康に影響を及ぼすこともあります。

ある夫婦は、物干し竿を使って急ごしらえの手すりを作り、それを伝ってトイレとベッドの往復がスムースにできる工夫をしました。

「迷い」から抜け出すために

目の見えている人にとって、都市部で迷うことは重大なことではないかもしれません。

なぜなら、地名表示があり、周囲の風景を見渡すことができるからです。

一方で、視覚障害のある人が道に迷う場合、事態は深刻です。

普段よく歩いている地域であっても、一度道を外れれば、それは未知の領域となります。

未知の領域から抜け出すための手がかり耳で探し手や杖で届く範囲にあるものから手がかりを探ることになります。

例えば、団地の敷地内など広い領域に迷い込んだ時には、公道へ戻るのが難しいこともあります。

未知の領域には、公道にはない障害物足元の凹凸があり、移動する際にはさらなる注意が必要です。

現在では、視覚障害のある人の大半が携帯電話を使用しているので、知人に電話をかけて状況を説明し助けを求めることもできます。

しかし、携帯電話が普及する前は個人の通信手段が限られていたため、やむなく大声で助けを求めるしかなかったという話もあります。

このように、視覚障害のある人が道に迷った場合、手がかりを探し、手がかりがない場合は周囲に助けを求めるという過程が必要です。

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