一般的に「杖(つえ)」は、身体を支えたりバランスを維持する目的で「ゲンコツ握り」で持って使用します。
一方、視覚障害のある人が使う杖は、身体を支えるための道具ではなく、周囲の環境を感知したり情報を得るための特別な道具です。
これらの杖は細いため軽く「握手握り」で使われ、「目の代わり」や「人差し指の延長」として機能します。
杖の技術革新
杖の基本構造はシンプルなため改良の余地はあまり多くありません。
ですが、近年の技術革新により「軽量化」「折りたたみ式への機能改善」および「石突(杖の先端部)の多様化」が進められています。
石突には、路面に対する引っかかりにくさと適切な音を出す能力が求められます。
現在、新たなメーカーも市場に参入しており、大手スポーツ用品メーカーのミズノも視覚障害者用の杖を開発しています。
「ロングケイン」と「ショートケイン」
米国で1940年代にHooverらによって開発された「ロングケイン(長い杖)」は、胸から顔の高さほどの長さを持ち、
現在広く利用されています。
これに対し、それ以前から使われていた腰高の杖は「ショートケイン(短い杖)」と呼ばれ、踏み出す足のすぐ前を探るのに使われました。
ロングケインは、「次に踏み出す足」の着地点を確認するものであり、このためショートケインよりも長いです。
「ロングケイン技術」では、杖を握手握りで握り、身体の正中線上で手首を支点にして左右に振りますが、
視覚障害のある人達の多くが厳密にこの方法で杖を使っているわけではありません。
杖のタイプ
杖には様々なタイプがあり、使用される材料にはカーボンファイバー、アルミ、アラミド繊維、グラスファイバーなどがあります。
杖の構造には一本もの、折りたたみ式、伸縮式などがあり、杖の長さや重量も使用者の必要性や好みによって異なります。
使い方や持ち方も、視覚障害のある人一人ひとりのライフスタイルや、好みに合わせて多彩です。
注:文中では視覚障害者用杖の一般的な呼び名である「白杖(はくじょう)」を意図的に使用していません。
白以外の色の杖を使用する例も存在するからです。