パラレルアライメント(parallel alignment)

図1 パラレルアライメントの姿勢

パラレルアライメント(parallel alignment)とは

パラレルアライメント (parallel alignment) は、スクウェアオフと同様に、

空間を移動する際に、進むべき方向を定めるための技術です。

スクウェアオフが壁などの平坦な面を基準に、その面と直角な方向を取るのに対し、

パラレルアライメントは、平坦な面と平行な方向を取ります(図1)。

家具建物の壁構造物などの直線や平面部分を利用し、それと自分の身体の向きを整え、進行方向を定めます。

つまり、進もうとする方向と平行な面や線を手がかりに、自らの進行方向を定位する技術です。

手順(壁面を使用する場合)

  1. 壁面に片方の肩が軽く触れるように立ち、壁側の手を前後に約60度の範囲で振り子のように動かして壁の方向を確認します。
  2. 筋肉や関節の感覚(深部感覚)を使い、身体を壁と平行な方向に整えます。


この技術の導入時には、まず壁のように身長より高く長さもある面を使って練習するのが効果的です。

頭や体が壁あるいは廊下の方を向いている場合と、平行になっている場合とで、

身体の緊張感左右のバランスの違いを体感し、偏りのない姿勢を取れるように練習します。

壁での練習が安定して行えるようになったら、次は受付カウンター長椅子敷居など、

身体が接する範囲が限られる構造物に進みます。

最終的には、床面や路面の直線部分ショアライン縁石など)を足裏や杖で感知し、

同様の平行方向を定位できることを目指します。

パラレルアライメントの応用場面:廊下の横断

パラレルアライメントの典型的な応用として、「交差する廊下を横断する」場面が挙げられます。

たとえば、右側の壁沿いに歩いている時に、前方に交差する廊下が現れた場合、

壁に沿ってパラレルアライメントを行い、そのまま平行な方向を維持して廊下を横断します(図2)。

図2 パラレルアライメントによる廊下横断

一方、スクウェアオフを使う場合は、いったん右に曲がって交差廊下に入り、

進行方向と直角の壁面でスクウェアオフを行い、その方向に直進する、という流れになります(図3)。

図3 インデンティングによる廊下横断

このように、スクウェアオフを用いて交差廊下を横断する方法は「インデンティング(indenting)」 と呼ばれます。

パラレルアライメントとインデンティングによる横断軌跡のブレ可能性の比較

図2、図3に示したグレーの扇形は、それぞれの方法で生じる横断軌跡のブレの可能性を表しています。

ここでは、パラレルアライメントスクウェアオフのいずれの場合も、方向のブレ幅は同程度と仮定しています。

インデンティングでは、いったん交差する廊下に入り込んで、方向を定位してから横断し、

さらに横断後に元の進路に戻るという手順を踏むため時間がかかります。

しかし、交差廊下に入り込んでから横断するため、平行する廊下に進入する可能性は非常に低くなります。

一方、パラレルアライメントは、直線的に横断できるため効率的ですが、

横断方向が左にずれると、平行する廊下に進入する可能性があります。

平行する廊下に侵入する可能性があるということは、

横断後に自分がどの廊下に到達したのか(交差廊下か平行廊下か)の判断が難しくなり、

結果として横断後のオリエンテーションを失いやすくなるリスクがあります。

横断歩道への応用と実際の制約

この技術は、交差点の横断にもそのまま応用できます。

ただし、横断後に確実に対岸に到達するには、

スクウェアオフによるインデンティングの方が確実性が高いことを理解しておくことが重要です。

近年の交差点では角が大きく丸く設計されており、横断開始点が曲線上にある場合が増えています。

ファーストフード店の前の交差点の写真。店の前の歩道の角が大きく丸くなっていて、そこから横断歩道が始まっている。その丸みに沿うように点字ブロックが敷設されている。横断歩道上にはエスコートゾーンが敷設されている。

このような場所では、歩道の縁石を使ってスクウェアオフを行うことが難しくなるため、

点字ブロックなど他の方向指示要素 (direction indicator) を活用する必要がありす。

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